ネックポケットにマージンはない。4点止めで ネックは左右に動かすマージンは無いのである。


サドルもタイトである。動かない。




このストラトは76年だが、グネコロゴに多く存在する、ビザール的コピーからちょうど脱却期で、精度も上がってきてフルコピーに突入している。


「ネックポケットをルーターで6弦側に1mmほど研磨だなぁ、、、、、、、」と考えた。


しかし、このギターを初めて見た時の、アンバランスな顔だった。

そう、ピックガードのマウント位置がどうもオカシイ?

画像で見てご理解頂けると思うが ブリッジのブロックに合わせて、無理やりに付いて

ボディアールに沿っていないのが、不格好なのだ。


「ひょっとして?」


そう!ブリッジマウントがセンターを外していたのだ。


普通はネック側を疑う。ネジを緩めてネックの角度を左右に調整する姿を

ご存知の方も多いだろう。


しかし......

国産オールドも色々見てきたが、こんな例は稀。


ヤレックと相談して「まず間違いない ブリッジを移動」と心に決めるが

心配な事がある。


ピックガードも動くので、ボディ内部のPUキャビティに余裕があるか?

バック面のキャビティもルーターで掘る必要が有るのかだ?


フェンダータイプのボディとネックが持ち込まれる事も多いけど、イナーシャブロックがうまく収まらないで アーミング時に不安定、もしくはスムーズさに欠ける事も多い。


しかし、僕らはいつも修正作業をやってしまう。


見積もり間違いで、金額オーバーでも自腹を切る。

ヤレックも僕も気が済まない太刀で 追い込むのだ。

(イナーシャブロックの6弦側のスペースが広い。

僕らの見解は正しいと自信が持てた。)


バックカヴァーを外すと、スペースがある。

考えてみると 収まるはずである。


ブリッジのマウントが違うのだから


実際スプリングを外して、フリーにして弦を当てて見ると、、、、、、、

ブリッジが1.5mm 6弦側に上がらないとおかしいのだ。


ビス穴を見て頂くと理解できる。

1.5ミリも 位置がズレているのが信じられなかったが現実だ。

ピックガードがフロントPU側で盛り上がり過ぎているのもこれが原因だ。

(8点止めは、ただでさえ ピックガードが浮き易いのに.....)


勿論、ジャック付近のピックガードも上がり、あの不格好なボディもシェイプされて

ストラト独特の美形な面構えになる。


1.5mmで すべて帳尻が合う。


安直な判断でボディを研磨しなくて良かった、、、と安堵した。


やはり、間違った工事をしなかった。ギリギリセーフと言う感じがする。


何回も書いて申し訳ないが、一度削ったボディは100%元には戻らないのだから


本題に戻るが、1.5mmの移動によって、ピックガードも収まる事を書いたが この様になる。

この差は大きい。


ギターのツラは本当に些細なビスにも影響する。


ハムバッカーの釣りネジはやはりマイナスが好き!と言う自分が居る。


さて、いよいよ穴埋めだがヤレックが実に繊細な仕事をしてくれる。


ブリッジ固定のビスは長めで有るし、先細。

2種類の材を巧みに使う。(カメラを向けていないことが残念でならない)

カッターで鉛筆の先を削る様にヤレックは繊細な仕事をする。


そして、埋めてエポキシで固めている。

エポキシ樹脂が固まる前にある程度除去して、レベリングして

ビス穴を掘る。


いよいよ弦を張り……


見た目でも理解できる。センターがジャストに出ている。


ナットを掘る時もそうだが、人間の目視という物は計測より誤差がない。


ピックガード穴も全て埋めてバランスを取る。

今回の76年ストラトレフティ実に興味深い物がある。


そんな事を考えていた時に2人組の来客。

そう、生きていくのが不器用な(僕もそうだが、、、、)ギター馬鹿オヤジのヤスさんと橋本氏。


リペアルームのフックに吊り下がった このストラトを見て


「これですねぇー。例のレフティ」


「なんで知ってるの?」正直びっくりした。


「ブログに書いてあったじゃないですか!」


そうか!?読んではくれているんだ、、、、と、思った。

しかし、、「少しはコメント入れてよ。。。。」と考えるが。


3人で正月の余りの特売餅を焼きながら、、、、、、、、


なんで こんなギターを当時グレコが出したか?(出荷したのか)


を、話し合った(大人が真剣なのが笑えるが)


「当時は レフティには やはりチェック甘かったろうね?」


「左利きの検査員が居なかったのかなぁ、、、、、」


「二日酔いで、弾かなくてもイイや。俺右だし、ハンコ、ハンコ

今日はやる気無いし、センター出てるに決まっているから。。。。

ハンコ押して、早く帰りたい、、、、、みたいな」


当時は保証書に検査員のハンコが打ってあった。

懐かしいが「MADE IN JAPAN」が精一杯頑張っていた時代。


そんな時にヤスさんが、、、、


「ビルダーの中には自分が右利きだから レフティは絶対つくらない人っているから...」


納得する一言を発する。


ヤスさんは、レフティ。試しに弾いて貰う。


僕のストラトを皆で聴いた後だから 特にツライ音が聞こえる。

レンジが非常にナローなので、、、、、、


「痛いトーンだねぇ、、、作りはビザールから脱却しているけど

レンジの狭さは未だビザールを脱していないよね」


3人とも見解は同じ。


この3人はヴィンテージトーンの酸いも甘いも知っている。


ただ僕が考えるのは、、、、、、、


「貴方は、この様なエラーコインみたいなストラトをどう考えるれるのだろうか?」


嫌だ!と言う答えだったら僕は寂しい。


理由は、、、、、、、


貴方は完璧な人間ですか?と、言う事である。

(人間完璧でないから面白いと思える)


僕は こんなギターでも大好きであるし好きになれる。

(ただ、このPUは大嫌いで、直ぐにでもオサラバしたいと考える)



(楽器にも、こう思いたいものである)


ヘッド折れに対する意識も書いたが


直せば良いのである!木は直せるのだし今後楽器としてまともに歌える


貴方に障害が有る子が仮に生まれたとしても、貴方はその子を嫌いだとは言わないと思う。


可愛い筈で有る。余計に愛情を注げるかもしれない。


僕が何時も抱いているMシュナウザーのケイティもそう言う側面がある。

高齢出産で未熟児の女の子だった。

大手ペットショップでの個体の規定があるらしい。あまりに小さい為

大きさで不合格の犬だったのだが 僕が敢えてこの子を選んだ。


「未熟児で病気多いかもしれないなぁ.......」


一抹の不安も有ったが、腹を決めて里親になる事を決心した。


そんな犬なら余計に大事に育てがいがあると考えたのだ。


ギターだってそうだと思う。

(楽器を子供の様に愛しく思えるなら)


日本人が最高の技術を夢見て 確かな意思を持ってフェンギブに

牙を向いて作って、、、、、


こんなポカをした(笑)


本当に、ある意味、日本ギター史上の珍品で有ると考えたら


このギターは本当に可愛い!と思えない人は、可愛いい人間なのだろうか?


僕は自分が最低と思っているから、今 所持している自分のギターに

申し訳ないと思っている。


「お前らさぁ……


凄い良い音しているのに、弾き手が俺だからなぁ……


わりぃなぁ。。。。。。俺に抱かれたのが運の憑きよ


悪い運命と思って諦めろよな。そう、俺と死ぬまで付き合いな!」


こう、言い聞かせている。


今回、実に的確な判断と、ナイスな仕事をしてくれたヤレックに

感謝したい。


30年以上経ったギター ファインギターズに来て 初めてエラーが見つかり修正できた事を不思議な感覚に感じる。


誰も気付かないで そのままの可能性も有ったろうに......


今回の件は 少しいたずら好きな神様のMigicなのだと思える。

そう、ストラトが持った本来の美形が戻った。

ストラトのラインはとても美しいと再認識。


最終的にピックガードを微調整する。

ヤレックは息を止めて、ギターを優しい目で眺めながらピックガードを研磨している。